☆今回は、全国の職場でしばしば見られる、さまざまな「ハラスメント」について、
その定義や内容、影響等を考えてみたいと思います。
<ハラスメントの定義とハラスメントの影響> ◆まず「ハラスメント」とは、 「嫌がらせやいじめを意味し、相手の尊厳や人格を傷つける言動を指す」 とされています。
◆ハラスメントが職場で発生すると、さまざまな悪影響が生じます。 被害を受けているご本人が被害を受けるだけでなく、 周囲の社員や会社経営も多大な影響を受けることになります。
◆ハラスメントの発生は、何が何でも防がなければなりません。
◆ハラスメントによる「悪影響」を挙げてみます。
◆加害者(本人)の法的責任 ・ハラスメントの加害者は、法的責任が問われる可能性があります。 ・「刑法」により、刑事責任を問われるばかりでなく、 「民法」により、被害者本人・家族等から損害賠償を請求されることもあります。 ・また社内で、就業規則の懲戒処分(懲戒解雇を含む)の対象になることがあります。
■刑事責任:刑法 強制わいせつ罪、強姦罪、傷害罪、暴行罪、脅迫罪、強要罪、名誉棄損罪 などにあたる可能性があります。
■民事責任:民法709条 不法行為による損害賠償:故意または過失によって他人の権利または法律上保護される 利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する 責任を負う、とされています。
◆会社(使用者)の法的責任 ■安全配慮義務:労働契約法5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、 身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、 必要な配慮をするものとする、とされています。
■使用者責任 :民法715条 ある事業のために他人を使用する者(会社)は、 被用者(従業員)がその事業の執行について第三者に加えた損害を 賠償する責任を負う、とされています。
◆労災保険について ■ハラスメントが原因のメンタル不調に対し、労災保険が認定されることがあります。 認定基準となる「業務による心理的負荷表」には ・「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」 ・「上司とのトラブルがあった」 ・「セクシュアルハラスメントを受けた」 という分類があります。
注)ただし、その心理的負荷の程度が総合判断されて決定されます。 ハラスメント行為があれば自動的に認められる、 というわけではございませんのでご留意ください。
<セクシュアルハラスメント> ◆セクハラの定義 ■セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、 「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により, 当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、 又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される」 と男女雇用機会均等法において定められております。
■「職場」とは、普段就業している場所だけではなく、 業務を遂行する場所であれば職場に該当します。 ■つまり、取引先と打ち合わせをする飲食店、業務を行う顧客の自宅、 職務の延長線上にある終業後の宴会の場も、職場に該当することになります。
■また「労働者」とは、パートタイマ―、派遣社員等を含めて、 すべての労働者が対象となります
■「不利益」とは、 ・対価型セクハラ→拒否反応したなどにより、 解雇・降格などの不利益を受けることをいいます。 ・環境型セクハラ→性的な言動により、職場が不快なものとなり、 社員の能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、 就業する上で見過ごせない支障が生じることをいいます。
■セクハラには、異性に対するものだけではなく、同性に対する者も含まれます。
■厚生労働省から「セクハラ指針」が出されておりますので、 詳細につきましては、その指針をご確認ください。
<マタニティハラスメント> ◆マタハラの定義 ■マタニティハラスメント(マタハラ)については、法的な定義はありません。 ■一般的には、働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇・雇止めをされることや、 妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントのこと、 とされています。
■例としては、 ・上司から「妊娠した女性は退職するのが常識だよ」と言われた。 ・妊娠報告をしたところ、退職をほのめかすような言葉を繰り返し発言された。 ・本人が「外回りはつらい」と上司に申し出たが、 「妊娠中だからと言って特別扱いはできない」と言われ、まったく配慮されない。 ・育児休業を申し出たが認めてもらえず、上司から退職をほのめかす発言をされた。 ・同僚から「子どもを理由に休めていいわよね」と言われた。
■こちらも厚生労働省から「マタハラ指針」が出されておりますので、 詳細につきましては、その指針をご確認ください。
<パワーハラスメント> ◆パワーハラスメントの定義 ■現在のところ、パワハラについては、法的な定義はありません。 現在、厚生労働省がパワハラ禁止を法律で定めようとしていると 報道されております。
■現在の厚生労働省のホームページでは、パワハラを、 「同じ職場で働く者に対して、 職務上の地位や人間関係等の職場内の優位性を背景に、 業務の適正な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」 と定義しています。
■一応、パワハラの整理として以下のように整理されておりますが、 これ以外の行為であっても問題になることがありますのでご留意ください。 ・身体的な攻撃 :暴行、傷害 ・精神的な攻撃 :脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言 ・人間関係からの切り離し:隔離、仲間外し、無視 ・過大な要求 :業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、 仕事の妨害 ・過小な要求 :業務上の合理性なく、 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を 命じることや仕事を与えないこと ・個の侵害 :私的なことに過度に立ち入ること
◇ハラスメントを防止するために、全員(一人ひとり)が、以下のような点について、 十分認識して行動することができなければ、 ハラスメント行為を防止することは不可能なのではないか、 と個人的に危惧しております。
②この程度は許されるといった考え方は危険。
怒鳴る、脅す、無視する、執拗に責め立てる、など。
パワハラと適切な指導の違いは難しいですが、論理的に説明する。
<その他の代表的なハラスメントの一部> ・モラルハラスメント (モラハラ) :言葉や態度によって精神的な嫌がらせを行うこと。 嫌がらせの隠蔽が行われることもあります。
・アルコールハラスメント(アルハラ) :飲酒の強要、一気飲みの強要、など。
・ジェンダーハラスメント(ジェンハラ):男のくせに、女のくせに、 男らしさ、女らしさ、など。
・カスタマーハラスメント(カスハラ) :土下座の強要、何度もクレームの電話を入れる、 難癖をつけて支払いを拒否する・謝罪文を求める、 など。
☆以上、今回はさまざまな「ハラスメント」につきまして記載させていただいました。 メンタルヘルスにつきまして、皆様、十分お気をつけください。 そして、早めのご対応をお心がけください。 |