★東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授による労働法学研修(第七回)を
受講いたしました。
◇今回のテーマは、 「解雇以外の退職事由」(雇用関係の終了事由) についてです。
■雇用関係が終了する事由(退職となる事由)としては以下の事由が挙げられます。 ①解雇 → 会 社 が、 一方的な意思表示によって、 労働契約を解約すること。 ②辞職 → 労働者が、一方的な意思表示によって、 労働契約を解約すること。 ③合意解約 → 両当事者(会社と労働者)の合意によって、労働契約が解約されること。 その他として、 〇有期労働契約の期間満了による終了。 〇傷病休職期間の満了による終了。 〇定年。 〇当事者の消滅 →労働者の死亡、会社の消滅など。
■解雇は、さらに「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の場合があります。
◇今回は、 「解雇以外の契約終了(退職)事由」として以下の場合を考えます。
■(例) ◆社長と口論になってカッとなったAさんは、 売り言葉に買い言葉で、 「こんな会社、辞めてやる!」と啖呵を切って 会社を飛び出してしまいました。 ◆でもあとから冷静になって考えてみると、 「勢いで言っちゃったけど、辞めたくない・・・」
■この「辞める」発言は撤回できるのでしょうか?
⇒もちろん、社長が撤回を認めるならば問題はありません。
⇒しかし社長が撤回を認めなければ、原則として、 Aさんの「辞める」発言は、 「労働者の一方的な解約の意思表示」とされます。 ⇒その場合は法律的に、 会社(社長)にその意思表示が到達した時点以降、 原則として撤回はできない、とされています。 (退職の意思表示の2週間後に退職となります。)
■ただし、錯誤(さくご)、詐欺・脅迫、心裡留保(しんりりゅうほ)など、 「辞める」という意思表示に瑕疵(欠陥)があった場合は、 法律的に無効・取消を主張できる「こと」があります。
<例えば、心裡留保の例> (『本心』ではないことを言ってしまった場合) ■民法93条:心裡留保(しんりりゅうほ)の条文に本件事例を当てはめてみると、 辞めるという意思表示は、 意思表示した人自身(Aさん)が、 『本心』でないと自覚していたとしても、 その意思表示は有効である。
ただし相手(社長)が、 意思表示した人(Aさん)の『本心』をわかっていたのならば、 辞めるという意思表示は無効とする、 となります。 (省略の上、わかりやすい文章に置き換えております。)
■平たく言うと、 Aさんは、たとえ本当は辞めたくなかったとしても、 「辞めてやる」と社長に言ってしまったのだったら、 原則として、その言葉に責任を持たなければならない。
ただし、「Aさんは、本当は辞めたくないと思っている」 ということを社長がわかっていたのだったら、その時は、 「辞める」と言った行為は無効になる、 ということを言っております。 (あくまで心裡留保の一例で、裁判所の判断となります。)
☆他にも撤回(無効・取消)となるケースは考えられますが、 裁判でも撤回が認められるのは限定的とのことでした。
⇒くれぐれもカッとなって「辞めてやる!」などと 言ってしまわないようにお気を付けください。
※わかりやすい文章とするために、 法律用語・言い回しを平易な表現にさせていただいております。
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