★東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授による労働法学研修(第八回)を受講いたしました。
◇今回のテーマは、 「労働者の人権の保障」 についてでした。
<日本の雇用形態の歴史的経緯についての、水町先生の指摘ポイント(一部)> 〇日本企業の多くは、正社員の長期的雇用を中心とする企業共同体としての 性格を強く持ってきました。 〇この企業共同体による人と人とのつながりには、メリットとデメリットがあります。 (メリット)
(デメリット)
〇このような実態の中で、日本企業では従来、 労働者の人権という視点はそれほど強く意識されてきませんでした。 〇しかし、そのような実態であるからこそ、 現在、「労働者の人権保障」という視点がたいへん重要になってきているのです。
■労働者の人権に関しては様々な問題があります。 ■例えば、 「強制労働の問題」「契約期間の問題」「違約金・賠償予定禁止の問題」 「雇用差別の問題」「均等待遇の問題」「男女間賃金差別の問題」 「配置・昇進・退職などに関する差別の問題」「間接差別の問題」 「婚姻・妊娠・出産等に関する差別の問題」「障害者差別の問題」 「いじめ・嫌がらせなど人格権の問題」「各種ハラスメントの問題」 「プライバシー保護の問題」その他、極めて多岐にわたります。
■それぞれ大きな問題ですが、今回は、 「会社が負担した留学・研修費用を、会社に返還する義務があるか?」 という問題を取り上げます。(これは「違約金・賠償予定禁止の問題」にあたります。)
□例として、 ・Aさんは、会社の留学制度を利用して、会社の費用負担で2年間海外留学しました。 ・留学に際し、『帰任後5年以内に自己都合退職した場合は、 留学費用の全部を即時に弁済します』との誓約書に署名捺印しました。 ・留学を終えて戻ったAさんは、その2年後に退職し、他社に転職しました。 ⇒この場合、会社は留学費用をAさんに請求することができるでしょうか?
◆裁判例からみた場合、その判断のポイント・傾向は、 「その留学や研修の『業務性』の有無を重視する傾向にある」 とのことでした。
◆ざっくりいうと、判断は「仕事との関連性による」ということになります。
■わかりやすく言い換えますと、その留学や研修の経緯・内容をみた場合に、
という考え方であるとのことでした。
■また、たとえ返還請求できる場合であったとしても、必ずしも全額請求できるわけではなく、 帰任から退職までの期間などに応じて判断される、とのことでした。
※わかりやすい文章とするために、 法律用語・言い回しを平易な表現にさせていただいております。
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