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【労働法学】「配転・出向・転籍」の有効性

★東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授による労働法学研修(第五回)を受講

いたしました。

 

◇今回のテーマは、

 「配転・出向・転籍」の有効性

 についてです。

 

◇「配転

 ■配転とは・・・職務内容や勤務場所の変更(短期間の出張を除く)のこととされます。

 

 ■最高裁は「東亜ペイント事件判決S61.7.14」で以下のとおり判示いたしました。

  1.会社が有効に配転を命じるためには、

    配転命令権が労働協約や就業規則の定めなどによって

    労働契約上根拠づけられていることが必要である。

    (「業務上の都合により配転を命じることができる」などの明記)

  2.たとえ会社に配転命令権が認められる場合であったとしても、

    その行使が「権利の乱用」にあたる場合はその配転は無効である。

 

 ■権利の乱用にあたるか否かの判断基準は、(10/17 一部修正させていただきました。)

  1.   ①配転命令に業務上の必要性が存在しない。
  2.    (例えば配置転換の必要がないなど。)
  3.   ②不当な動機目的である。
  4.    (例えば嫌がらせや退職へ追い込むためなど。)
  5.   ③労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである。
  6.    (最近は介護・看護などの事情のほか、事前の聴取・説明の有無なども増加傾向のようです。)
  7.     ⇒この3つの「特段の事情」がないのであれば、

     その配転命令は、権利の乱用にはあたらないと判断でき有効である、と判示しました。

 

    つまり簡単にまとめますと、

  1.     就業規則等にきちんと配転のことが書いてあって、
  2.     その配転がどうしても必要で、かつ、嫌がらせなどの理由でなく、
  3.     転勤後の状況が一般的に見てみてひどいと言われる程度ではないのならば、

     ⇒「会社は配転を命じることができる」ということになります。

     ⇒ 労働者の個別同意は必要ない、ということです。

      

 

 

◇「出向

 ■出向とは・・・元の企業との間で従業員としての地位を維持しながら、

        他の企業においてその指揮命令に従って就労することを指します。

       (在籍出向とも呼ばれます。)

 

 ■「出向」は、最高裁判決(新日本製鐵事件H15.4.18)により、

  出向期間、出向中の地位、出向先での労働条件など出向労働者の利益に配慮した

  出向規定が設けられている場合は、

  会社は労働者の個別同意なしに出向を命じることができる、と判示しております。

    ※これを「条件付包括的同意説」と言うそうです。

    ⇒つまり出向については、きちんと条件を満たしていれば、

     一人ひとりの同意を取り付ける必要はない、ということになります。

     (権利乱用についての考え方は、配転と同様です。)

 

 

◇「転籍

 ■転籍とは・・・元の企業との労働契約関係を終了させ、

        新たに他の企業との労働契約関係に入ることをいいます。

       (移籍出向とも呼ばれます。)

 

 ■転籍は、

  元の労働契約を解約して、新たな労働契約を成立させるものであることから、

  労働者本人の個別同意が必要であり、

  会社が一方的に転籍を命じることはできない、とされております。

 

 

 ☆ただし、合併・事業譲渡・会社分割・会社解散の場合は、

  別に民法625条1項や労働契約承継法によりルールが定められております。

  今回は、こちらについては割愛させていただきます。

 

 

 (※わかりやすくするために、文章・用語の一部を変更させていただいております。)

 

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