★東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授による労働法学研修(第二回)を
受講いたしました。
◇今回のテーマは「使用者」についてです。 ◇具体的には、 親会社と子会社の関係の中で、子会社の従業員が「親会社の社長に対して使用者責任を問えるか」 という内容です。(責任を問えるケースはどのような場合か?)
■原則 労働契約上の責任を負う主体としての使用者は、当該労働者が労働契約を締結している 直接の相手方である企業、とされます。 ■しかし、実質的に企業を支配している者が法形式を悪用して契約責任を回避しようとする場合など、 契約上の一方当事者でない者に、使用者としての責任を追及すべき場合もある、とのことです。
■具体的に、この使用者概念の拡張を認める技法として、判例上大きく2つの法理が 提示されているとのことです。
<1つめは「法人格否認の法理」と呼ばれているもので、2型式あるとのことです。> ①「法人格否認の法理(法人格形骸型)」 ■法人格否認の法理(法人格形骸型)は、実質的に支配している者が、 法人格が異なることを理由に責任の帰属を否定することが正義・衡平の原理に反すると 考えられる場合に、信義則(民法1条2項)上そのような主張をすることを許さないもの とする法理と位置付けられる、とのことです。 ■法人格の形骸化による法人格の否認が認められるためには、 単に株式の所有等で当該企業に対し支配を及ぼしているというだけでは足りず、 人事、財務、業務執行等の面でも実質的に支配・管理し、同企業の法人格が全くの形骸に すぎなかったことが必要であると解されているとのことです。 ②「法人格否認の法理(法人格濫用型)」 ■法人格の濫用による法人格の否認については、法人を背後から「支配」している者が その法人格を違法・不当な「目的」で濫用したという事情が必要であるとされるとのことです。
<2つめは、「黙示の労働契約の成立」です。> ■通常派遣労働の場合は、派遣先企業から指揮命令を受けますが、 派遣労働者は、派遣元企業と労働契約を結び、派遣元企業から賃金を受け取ります。 ■しかし例は少ないものの、派遣先企業と派遣労働者の間に黙示の労働契約が 認められることがありうる、とのことです。
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