いきなりお客様から理不尽な要求を突き付けられ、
☆そんな「カスハラ」ですが、 今回は「カスハラ」の別の側面について記載いたします。 ⇓ それは、 企業は「常に従業員の安全(心身の健康)に配慮しなければならない」 という、企業の「安全配慮義務」という法律についてのお話です。
言い方を換えますと、カスハラに関して、 「企業は被害者でもあるが、加害者にもなり得る」というお話です。
■そして、企業がこの安全配慮義務を果たしていなければ、 債務不履行責任を問われ、従業員から訴えられる可能性があるのです。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を 確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
◇民法 第415条(債務不履行による損害賠償) 「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、 これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」
2)派遣労働者に対する指揮・命令は派遣先企業が行いますが、同様に 派遣労働者に対する安全配慮義務も派遣先が負うことになります。 3)出向者に対しては、原則として、直接雇用契約のある出向元と、 実質的な指揮命令権を有する出向先企業の双方が安全配慮義務を負います。 4)下請けの従業員に対しては、直接的な雇用関係がない場合でも、 元請けの現場責任者が自社の労働者に対して行うのと同様に下請けの 労働者に対して直接指揮命令を行うなど、元請けと下請けの労働者の関係が 「実質的な指揮命令関係にあるような特別な社会的接触関係」に 入ったと認められる場合には、信義則上の義務として 元受けの安全配慮義務が認められる、と判示されています。 「信義則」とは、民法第1条第2項に規定する「信義誠実の原則」の こととなります。
(6)安全配慮義務に関する最高裁判例(詳細は省略いたします)
(事案概要) ■自衛隊員が自衛隊駐屯地で車両整備に従事していたところ、 同僚隊員が運転する大型自動車の後輪で頭部を轢かれて 即死し、両親らが国に対して損害賠償請求したもの。 (判決要旨:安全配慮義務部分) ■国は公務員に対し(本件は自衛隊員)、公務員の生命及び健康等を 危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている ものと解すべきである。 ■安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係 (本件は国と公務員の関係)に入った当事者間において、 当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して 信義則上負う義務として一般的に認められるべきものである。
(事案概要) ■宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事件で、 会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた事件。 (判決要旨:安全配慮義務部分) ■使用者は、報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置 する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに 労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から 保護するよう配慮すべき義務 (=安全配慮義務)を負っている。 ■宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、 かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかも知れない 危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、 これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、 宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、 もって物的施設等と相まって労働者たる宿直員の生命、身体等に 危険が及ばないように配慮する義務があった。
☆以上のとおり、「従業員の生命、身体、心を守るための対策を取ること」 は、企業道徳としての問題に加えて、法律で企業に定められた義務の問題 であり、企業のリスクマネジメントそのものなのです!
☆働くすべての方が幸せな人生を送れるようになるために、 大切な従業員の命と心を守り、企業自身のことも守る 「適切なカスタマー・ハラスメント対策」が すべての企業で行われますことを心から願っております!
社会保険労務士事務所スローダウン 特定社会保険労務士 カスタマー・ハラスメント対策コンサルタント 室岡 宏
|